バンコク都への9台の中古消防自動車贈呈式。向って左からバンコク都議会ピパッ議長、松尾議長、私、バンコク消防自動車受入委員会キットポン委員長(前議長)(3月28日・宗像の県消防学校)
経済格差が学力格差を生み出す
現状を変えよう

 本来学校の役割は学校における教育を通じて子どもが充分な知識を得、多くの経験を積み重ね、対人関係を知り、人間として生きる力を養うことです。しかし現実には、高校や大学受験では、通常の学校現場における教育だけでは充分ではないため、受験のため塾に通うことになり、結果的に塾に通わせることができる経済力のある家庭とそうでない家庭とでは希望する高校や大学への入学に格差が生まれ、それが負の連鎖となりつつある社会的現象を指す、「経済格差が学力格差」という言葉が公然と使われるようになっています。
 私は、経済格差が学力格差を生み出す現状を打破し、義務教育における学校間や学級間の教育格差を解消するためには、本県のすべての子どもたちに平等に生きる力を育んでいく学校教育を保障することが何よりも大切と考えます。これまで本県でも、教育改革の一環として、さまざまな授業の工夫・改善が取り組まれてきました。しかし、実際は先生の力量に左右されることが大きく、担任が変わるたびに授業のやり方も変わり、保護者から公然と担任の当たりはずれの声が出てきます。つまり、先生が一方的に教える側、児童・生徒が学ぶ側という授業スタイルが変わらないから生じている問題です。この問題の解決を考える中で私たちは、「学びの共同体」などの協同的な学習という教育手法があり、この手法を取り入れ、学力向上に大いに成果が上がっている自治体や学校が全国にあることを知りました。この学びの共同体とは、先生が教壇から一方的に教えるのではなく、講師を含む、どの先生が授業をしても、クラス全員の子どもが課題を探求し、子どもたちが生き生きと共に学びあい、課題を解決していく授業手法のことです。しかも、授業の中で子どもたちを孤立させないために、机の配置も課題によってメンバーを変え班学習をしたり、クラス全員が黒板に向いコの字型で対面式にしたり、教壇をなくし生徒と同じ目線で授業をしたり、先生の周囲に体操座りしたり、様々な形で集中し、かつ楽しい教え合う授業です。


各地の学びの共同体(協調学習)を精力的に視察。教育長に対し、基本姿勢を質しました。


2年間の取り組みで成果を上げた国頭村

 学びの共同体に一丸となって取り組んでいる沖縄県国頭村の小学校と中学校にそれぞれ2回、飯塚市の小学校、小中一貫校、宮崎県の綾中学校など、精力的に教育視察を行いました。そこでは、子ども同士が学び合うことによって、互いの信頼関係が築かれ、いじめ・不登校の減少という結果が出ていました。沖縄県の国頭村では、2009年度の全国学力テストが全国最下位の沖縄県で、しかも県最下位だったことから、学力向上対策に取り組んだものの、その結果、学力の2極化という新たな問題が生じたため、教育長の決断で村全体として学びの共同体を授業に取り入れることを決定しました。2年間の学びの共同体の取り組みにより、学力の2極化はかなり解消され、結果として2013年度の全国学力テストでは、試験項目によっては全国平均以上の結果が出ています。

沖縄県国頭村辺土名小学校(5月7日)
沖縄県国頭村国頭中学校(5月7日)
飯塚市も目覚ましい成果、土曜授業の可否に一石

 飯塚市では、この学びの共同体(協調学習)などとあわせ、毎日、学習内容を繰り返し反復することで、記憶や理解と計算力・正確さに効果がある反復学習も導入しています。また、「はっぱ」を「はぱ」と読んだり、「せっけん」を「せつけん」と読むなど、小さい「っ」の促音読みのつまずきや、「きゃべつ」を「きやべつ」、「きしゃ」を「きしや」と読むなど、1音節を仮名2文字で表す「ぎゃ」「ぎゅ」「ぎょ」のような拗音読みのつまずきを直す指導も行われています。これら促音や拗音の読みのつまずきは、読み書きのつまずきにつながり、国語の読解力のみならず、他の課目の内容理解も遅れるとして、これまで子どもが自然とおぼえていくものとされてきたものを、学習指導としてMIM(ミム:Multilayer Instruction Model)を取り入れています。これら3つの学習方法を中心とした2年間の取り組みで、2012年度に市内全22の小学校のうち20校で、全国標準学力検査(NRT)の平均を上回り、学習到達度検査
(CRT)は15校で全国平均を上回る結果が出ています。国頭村では学力格差と学校間教育格差を解消するために、学びの協同体という授業手法を実践し、結果としていじめ・不登校が減少し、学力が向上する成果を上げています。国頭村では、学校そのものを子どもたちだけの学び場とするのではなく、保護者や教職員、地域の人々が協力して、学び育ち会う場「学びの共同体」と位置付け、学校運営を行っています。現在、この学びの共同体を中心とする学校運営は、全国で1,500の小学校、2,000の中学校で導入され、埼玉県では県立の中学校と高校、本県では飯塚市のように自治体での導入もあります。すでに本県でも、単独で小学校15校、中学校7校が導入しています。今回の視察を通じて私たちは、学力向上のため、各地で導入されている土曜授業は、このような教え方の工夫で必要ないのではないかとの実感を強めています。

 こうした認識に立ち、6月6日から開催された6月定例県議会において、新任されたばかりの城戸秀明教育長に対し、代表質問において、その基本姿勢を質しました。主なやり取りは次のとおりです。
飯塚市鯰田小学校(4月17日)
本県の教育行政運営に臨む基本姿勢について
教育は、子どもの個性・能力を開花させ、人格の完成を目指す営みであるとともに、多様な人材を育成し、社会の発展を実現する基盤となるものと認識。このため、次代を担う本県の子どもたちが、学力や体力など、社会で自立するために必要な基礎的能力や、社会性、規範意識等社会の形成者として求められる資質をしっかりと身に付けさせる必要がある。
その前提として、子どもが、その個性や能力を伸ばすことができる教育の機会均等や、教育環境の確保に努めることも重要。
このような基本的考えの下、県民の教育に対する期待に応えるべく、実効性のある教育施策を検討し、しっかり取り組む。
本県の教育の在り方に関する認識について
教育は国の根幹であり、子どもたちは大きな可能性を秘めた次代の福岡県、そしてこの日本の国を担う宝である。私は、子どもたちには、相手のことを尊重し互いの多様性を認め、思いやりの心を持って社会的自立が果たせるような豊かな心と志を持つたくましい子どもに育ってもらいたいと考えている。
県内の教育関係者は、尽力していただいているが、なお、学力、体力、いじめ、不登校など様々な課題があると認識しており、教育委員会と連携しながら本県教育の更なる充実・強化を進めていかなければならないと考えている。
教育改革への挑戦について
いずれの取り組みも、市町村教育委員会が先頭に立って、子どもたちや学校、地域の実情に合った手法を見い出し、教育改革を推進している点で、評価。
また、この2つの事例とも、実践を積み重ねることによって、学力向上をはじめ一定の成果を上げており、本県の教育関係者にとっても、教育改革の参考となるものと思う。
先日、私も国頭村に視察に行った。いずれの取り組みも教育委員会が児童生徒や学校の実態を踏まえて、様々な教育手法の中から主体的に適切な手法を選択し、全教職員の共通理解の下、実践している点を評価。また、これらの取り組みにより、児童生徒の人間関係が改善され、教職員の協働意識が高まるなどの効果があったと認識。
これからの学校運営について
現在提唱されている改善の手法は様々で、それぞれに特徴や条件も異なる。したがって、市町村教育委員会や学校においては、それらの特徴等を十分理解し、児童生徒や学校の実情・実態に最も適した手法の選択が重要であると考える。
本県教育の現状を見ると、学力・体力の向上はもとより、学力の地域間の差やいじめ、不登校など解決すべき様々な課題があると認識。このため、県教育委員会としては学びの共同体等の学校改革に関する手法の研究を進め、市町村教育委員会や学校に適切な情報を提供することなどを通して、本県の教育課題の解決に向けた教育現場の主体的な改革が進むよう取り組む。
飯塚市鯰田小学校(4月17日)