これまでの麻生県政と
新しい福岡県政の課題と方向性

麻生知事退任表明

 10月5日、麻生福岡県知事が来年4月の知事選に不出馬を表明しました。わが会派は9月27日の9月県議会の代表質問で、知事の進退について質しましたが、結果的にはそのことをきっかけに知事に対し、多くの意見や注文が寄せられた結果、今回の表明に至ったようです。そこで、以下麻生県政の評価と新しい県政の課題と方向性について述べたいと思います。

麻生県政4期16年の評価

 麻生県政の16年は、「失われた20年」と言われる国内経済の低迷期と重なります。こうした状況下、自動車産業を福岡県の基幹産業へと成長をさせた他、IT産業の集積、バイオや水素といった今後期待される先端産業の育成、中小企業への無利子・無担保融資制度の創設など、経済産業政策は大いに評価できます。
 また「新雇用8万人創出」の取り組みや「若年者」、「中高年」、「女性」など、きめ細かな「職業紹介事業」を展開し、一定の実績をあげたことも評価すべきです。しかし、新空港建設問題は、滑走路増設で決着したものの、最後まで海上空港建設へのこだわりを示し、その姿勢は、私たちの考え方とは大きく異なるものでした。
 また、この間の県政を一例として経済面から概観すると、例えば県内総生産では、1996年度に全国順位が9位であったものが、2007年度は8位となっていますが、県内総生産額は約18兆2,000億円から18兆5,000億円へとわずか3,000億円の増加にとどまり、一人当たりの県民所得も96年度の全国順位28位から2007年度は26位へと順位はあげているものの、所得額は96年度の約288万円から2007年度は275万円に逆に13万円減少しています。「一人当たりの県民所得300万円」という、麻生知事の公約は残念ながら達成できていません。
 さらに今回の麻生知事の退任表明に当たり、知事自身が、「東京人脈・情報網」の低下を「退任の理由の一つ」と述べたように、産業政策以外の例えば福祉・環境といった分野では、これといった政策はなく、真に県民が求める福祉・環境政策が推進されたのか疑問が残ります。
 また、民主党のマニフェストのうち、「子供手当て」や「地方主権」は、一定評価したものの、例えば農業の戸別所得補償制度や、学力テストのしっかい調査等の政策では、わが会派と意見の隔たりが大きかったことは、指摘しておかなければなりません。
 こうした中、今年2月には、前副知事が収賄容疑で逮捕・起訴されるという、県政にとって前代未聞の衝撃的な事件が発生しました。麻生知事は当時、この事件について、「前副知事の長期の在任期間に問題があった」との見解を示していますが、それは同時に、「麻生知事の4期16年にわたる長期の県政運営が、事件の背景にあることの裏返し」とも言えるものです。

新しい福岡県政の課題と方向性

 わが国が直面している大きな課題としては、@新たな成長産業の育成や、ビジネスモデルの確立と雇用の拡大。A地域主権の推進による地域の活性化。B労働分配率の向上による所得格差の解消や、就労支援を基本にした貧困問題の解決などがあげられます。これらの課題は本県も同様です。
 また、本県は、産業構造に占める製造業の割合が高く、過去、奥田県政時代は「素材型産業から加工組立型産業への転換」、麻生県政時代は「加工組立型産業の拡大と先端産業への挑戦」を主な政策として取り組んできました。しかし、この間、製造業の生産拠点は賃金の安いアジア等の途上国に移転するとともに、ジリジリと上昇を続ける円高により、海外との価格競争では劣勢に立たされ、このことが賃金の上昇と内需の拡大を阻み、景気の長期低迷の大きな原因となっています。今、製品の生産システムは、国内での垂直型分業体制から、世界的な規模での水平型分業体制に移行していますが、これは本県の基幹産業となった自動車関連産業も例外ではなく、基幹部品の生産や最終組み立ても含めた生産拠点の途上国への移転の流れは、今後も加速していくことが考えられます。
 したがって、今後は北欧の成功例にならい、質の高い人的サービス、IT・バイオなどの先端産業の育成や自動車の研究開発設計拠点の誘致やデザイン産業の育成などの分野に産業構造を変えていく必要があります。さらに本県では、第一次産業の経営基盤の強化も重要です。そのため、付加価値の高い園芸作物の生産向上を始め、農林水産物の地産地消の拡大と国の戸別所得補償政策の積極活用により、第一次産業の担い手の確保を図ることが必要です。
 今後も経済がマイナス成長で推移すれば、雇用が大量に失われていくことが懸念されます。政府は新たな成長産業として、医療、介護、環境などの分野を示していますが、医療、介護の分野は国と自治体が責任をもって、福祉型社会を形成する重要な産業として育成し、雇用を作り出すことが重要です。
 また、国から財源や権限を移し、県民市民に最も近い自治体が主体的に地域振興や活性化、産業振興、医療や福祉の充実、教育環境の整備に取り組むために地域主権の確立は欠かせません。県への権限委譲の他、政令市、中核市にも大胆に権限を委譲し、市町村については権限委譲とともに、県が補完性の原則から対等な立場で連携を強化しながら支援することが重要です。
 トップダウン型の「少数精鋭の県庁」から、地域主権改革の時代にふさわしく「地域主権を共に担う県庁」に、県行政のあり方を改革する必要があります。
 さらに、地域の活力を高めていくためには、地域コミュニティーの復権も重要です。行政まかせでなく、行政と地域住民、NPOや民間企業が連携し、それぞれの特性に応じた役割を発揮し、協働することによって、地域の活性化とセーフティネットを構築することが必要です。そのため、人づくり(人材育成)は全ての基盤となります。特に、次代を担う子どもたちの健全育成、子育て支援と教育の充実は、次の県政における重要なインフラとして重視される必要があります。